![]() リチウム電池
专利摘要:
リチウム又はリチウム合金を含むアノードと、二硫化鉄(FeS2)及び炭素粒子を含むカソードとを有する一次電池。電解質は、有機溶媒混合物に溶解されたリチウム塩、好ましくはヨウ化リチウム(LiI)を含む。前記溶媒混合物には、好ましくはジオキソラン、ジメトキシエタン及びスルホランが含まれる。電解質はその中に、典型的に、電解質100万重量部当たり約100〜2000重量部(ppm)の水を含有する。二硫化鉄粉末と、炭素と、結合剤と、液体溶媒とを含むカソードスラリーが調製される。この混合物を導電性基材上にコーティングして溶媒を蒸発させると、基材上に乾燥カソードコーティングが残される。アノード及びカソードをそれらの間のセパレータと共にらせん状に巻き付けて、それを電池ケーシングの中に挿入してから、電解質を添加することができる。 公开号:JP2011514628A 申请号:JP2010546433 申请日:2009-02-12 公开日:2011-05-06 发明作者:ニコライ、ニコラエビッチ、イサエフ;マイケル、ディーン、スリガー;マイケル、ポジン 申请人:ザ ジレット カンパニー; IPC主号:H01M6-16
专利说明:
[0001] 本発明は、リチウム金属又はリチウム合金を含むアノード、二硫化鉄を含むカソード、リチウム塩を含む電解質、好ましくはジオキソランとジメトキシエタンとスルホランとの混合物を含む有機溶媒類、を有する一次リチウム電池に関する。] 背景技術 [0002] リチウムのアノードを有する一次(非充電式)電気化学電池は既知であり、幅広く商業的に利用されている。アノードは、本質的にリチウム金属から構成されている。かかる電池は、典型的に、二酸化マンガンを含むカソードと、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)のようなリチウム塩を有機溶媒に溶解させて含む電解質と、を有している。電池類は、当該技術分野では一次リチウム電池類(一次Li/MnO2電池類)として参照されており、一般には充電式を意図していない。リチウム金属アノードを有する以外に様々なカソードを有する、代替の一次リチウム電池も既知である。かかる電池類は、例えば、二硫化鉄(FeS2)を含むカソードを有しており、Li/FeS2電池類と呼ばれている。二硫化鉄(FeS2)はまた、黄鉄鉱としても既知である。Li/MnO2電池類又はLi/FeS2電池類は、典型的には円筒形電池の形態で、典型的には単三又は単四サイズの電池であるが、その他のサイズの円筒形電池類であってもよい。Li/MnO2電池類は、従来のZn/MnO2アルカリ電池類の2倍である約3.0Vの電圧を有し、そしてまた、アルカリ電池類よりも高いエネルギー密度(電池体積1cm3当たりのワット−時)も有する。Li/FeS2電池類は、約1.2〜1.8Vの電圧(新品)を有し、これは従来のZn/MnO2アルカリ電池類とほぼ同じである。それにもかかわらず、Li/FeS2電池のエネルギー密度(電池体積1cm3当たりのワット−時)は、同等のサイズのZn/MnO2アルカリ電池よりも高い。リチウム金属の理論比容量は、高めの3861.4ミリアンペア時/グラムであり、そしてFeS2の理論比容量は、893.6ミリアンペア時/グラムである。FeS2の理論容量は、FeS21分子当たり4個のLiからの4個の電子移動に基づいており、鉄元素Feと2個のLi2Sとの反応生成物をもたらす。すなわち、4個の電子のうち2個が、FeS2のFe+2における+2の酸化状態を鉄元素(Fe0)の0に変え、そして残りの2個の電子が、硫黄の酸化状態をFeS2の−1からLi2Sの−2に変える。電気化学反応が行われるには、アノードで生成されたリチウムイオンLi+は、セパレータ及び電解質媒質を通過してカソードまで移送されなければならない。] [0003] 全般的に観れば、Li/FeS2電池は、同じサイズのZn/MnO2アルカリ電池よりも一層強力である。すなわち、所与の連続電流ドレインの場合、特に200ミリアンペアを超える高い電流ドレインでは、電圧対時間特性において明白であり得るように、Li/FeS2電池の電圧は、Zn/MnO2アルカリ電圧よりも長い時間安定している。これにより、Li/FeS2電池から得られるエネルギー出力は、同じサイズのアルカリ電池で得られるエネルギー出力よりも高くなる。Li/FeS2電池のより高いエネルギー出力はまた、エネルギー(ワット−時)対定電力(ワット)での連続放電のグラフに更にはっきりとより直線的に示されており、この場合、新品の電池は、0.01ワット程度〜5ワット程度の低い範囲の一定の連続電力を最後まで放電する。かかる試験において、電力ドレインは、0.01ワット〜5ワットの間で選択された一定の連続電力で維持される。(放電中の電池の電圧降下として、負荷抵抗は、電流ドレインの上昇を徐々に和らげて、変わらない一定電力を維持する。)Li/FeS2電池に関するエネルギー(ワット−時)対電力(ワット)のグラフは、同じサイズのアルカリ電池よりも上方にある。それにもかかわらず、両者の電池類(新品)の起動電圧はほぼ同じ、すなわち約1.2〜1.8ボルトの間である。] [0004] このように、Li/FeS2電池は、同じサイズのアルカリ電池類、例えば、単4、単3、単2又は単1サイズの電池、あるいは任意の他のサイズの電池に優る利点を有し、その利点とは、Li/FeS2電池が、従来のZn/MnO2アルカリ電池と互換的に使用でき、また、特により高い電力需要に対して、より長い耐用年数を有するということである。同様に、一次(非充電式)電池であるLi/FeS2電池は、Li/FeS2電池とほぼ同じ電圧(新品)を有する同じサイズの充電式ニッケル金属水素化物電池の代替品として用いることができる。] [0005] Li/FeS2電池の1つの欠点は、パッシベーション層が主として電池の保管中又は断続的な休止中にリチウムアノード表面に徐々に蓄積する可能性があることである。パッシベーション層の化学的性質及びアノード表面でのその蓄積速度は、パッシベーション層を悪化させ、それにより電池性能に悪影響を及ぼす可能性がある。しかしながら、Li/FeS2電池において特定の電解質系を用いることにより、アノードパッシベーションの蓄積速度を減速させて、パッシベーション層を安定化できることが確かめられた。これには、特定の溶媒混合物を特定のリチウム塩類と組み合わせて検討することだけでなく、添加物類を電解質に含めることも包含される。そのため、Li/FeS2電池においてリチウムアノード上にパッシベーション層を作製し、それによって電池性能をほとんど低下させないことは可能である。] [0006] カソード材料は、最初にスラリー混合物の形態で調製されてもよく、それを一般には従来のコーティング法で基材、典型的には金属基材上に容易にコーティングしてもよい。電池に添加される電解質は、Li/FeS2系に好適な電解質であり、必要な電気化学反応を、所望の高い電力範囲全体で効率良く引き起こすことができる。電解質は、良好なイオン伝導度を示す必要があり、そして更には十分に安定、すなわち未放電の又は部分的に放電された電極材料(アノード及びカソード構成成分)に対して非反応性で、放電生成物に対しても非反応性でなければならない。これは、電解質と電極材料(放電済みのもの、未放電のもの、又は部分的に放電されたもののいずれか)との間の望ましくない酸化/還元反応が電解質を徐々に汚染して、その有効性を軽減するか又は過剰なガス発生をもたらす可能性があるためである。この結果、電池の故障が生じる可能性がある。したがって、Li/FeS2電池に使用される電解質は、必要とされる電気化学反応を促進させることに加えて、更に、放電済み、部分的に放電された又は未放電の電極材料との接触中に安定でなければならない。電解質溶媒は、良好なイオン移動度及びアノードからカソードへのリチウムイオン(Li+)の移送を可能にすべきであり、そうすることで、それが必要な還元反応を行って、カソード内にLi2S生成物を生じるさせることができる。] [0007] 一次リチウム電池類は、フラッシュ付きのデジタルカメラ用の電源として利用されており、個々のアルカリ電池で供給されるよりも高いパルス電力需要で作動する必要がある。一次リチウム電池類は、従来、導電性金属基材(カソード基材)上の、リチウムのシート(又は本質的にリチウムから構成されるリチウム合金)から形成されたアノードと、FeS2を含むカソード活物質のコーティングから形成されたカソードと、それらの間の電解質透過性セパレータ材料のシートと、を備える、電極複合体から形成されている。リチウム電池用のミクロポアを有するポリプロピレンセパレータは、例えば、米国特許第4,794,057号に開示されている。電極複合体は、例えば、米国特許第4,707,421号に示されているように、らせん状に巻き付けて、電池ケーシングの中に挿入してもよい。] [0008] らせん状に巻き付けられたアノードシートの一部は、典型的には電池ケーシングと電気的に接続されており、電池の負極端子を形成する。電池は、ケーシングから絶縁されたエンドキャップで閉じられている。カソードシートは、電池の正極端子を形成するエンドキャップと電気的に接続することができる。ケーシングは、典型的にはエンドキャップの周縁部を覆うように曲げて、ケーシングの開口端部を密封する。電池は、電池が短絡放電又は過熱などの悪条件にさらされた場合に電池を遮断するよう、PTC(正温度係数)デバイス等を内部に装備していてもよい。] [0009] Li/FeS2電池内のアノードは、銅などの金属基材上にリチウム金属又はリチウム合金の層を積層することによって形成することができる。また一方で、アノードは、基材を全く用いずに、リチウム又はリチウム合金のシートから形成されてもよい。] [0010] 一次Li/FeS2電池に用いられる電解質は、「有機溶媒」に溶解した「リチウム塩」から形成される。電解質は、リチウムイオンがセパレータを介してアノードからカソードへ良好な輸送率で移動できるように、リチウム塩のイオン化の電離を促進して、リチウムイオンの良好なイオン移動度を導かなければならない。Li/FeS2一次電池類用の電解質に使用してもよい代表的なリチウム塩類は、米国特許第5,290,414号及び米国特許第6,849,360 B2号に参照されており、以下のような塩類が挙げられる。トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、LiCF3SO3(LiTFS)、リチウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、Li(CF3SO2)2N(LiTFSI)、ヨウ化リチウム、LiI、臭化リチウム、LiBr、テトラフルオロホウ酸リチウム、LiBF4、ヘキサフルオロリン酸リチウム、LiPF6、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、LiAsF6、リチウムメチド、Li(CF3SO2)3C、過塩素酸リチウムLiClO4、リチウムビス(オキサラト)ボレート、LiBOB、及び様々な混合物。Li/FeS2の電気化学分野において、リチウム塩類は、特定の電解質溶媒混合物に最適に作用する特定の塩として必ずしも置き換え可能であるわけではない。] [0011] 米国特許第5,290,414号(マープル(Marple))には、電解質が、1,3−ジオキソラン(DX)と非環状(環状ではない)エーテル系溶媒である第2の溶媒との混合物を含む溶媒中に溶解されたリチウム塩を含む、FeS2電池類に有益な電解質の使用が報告されている。参照されているような非環状(環状ではない)エーテル系溶媒は、ジメトキシエタン(DME)、エチルグリム、ジグリム及びトリグリムであってもよいが、1,2−ジメトキシエタン(DME)が好ましい。実施例に示されるように、ジオキソランと1,2−ジメトキシエタン(DME)は、電解質中に実質的な量、すなわち1,3−ジオキソラン(DX)50体積%とジメトキシエタン(DME)40体積%又は1,3−ジオキソラン(DX)25体積%とジメトキシエタン(DME)75体積%で含まれている(7段目、47〜54行)。このような溶媒混合物(類)中でイオン化可能な特定のリチウム塩は、実施例に示されているように、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、LiCF3SO3である。別のリチウム塩、すなわちリチウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、Li(CF3SO2)2Nも、7段目、18〜19行に記載されている。この引例には、所望により3,5−ジメチルイソキサゾール(DMI)、3−メチル−2−オキサゾリドン、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチレングリコールサルファイト(EGS)、ジオキサン、ジメチルサルフェート(DMS)、及びスルホラン(請求項19)から選択される第3の溶媒を追加してもよいことが教示されており、好ましいのは3,5−ジメチルイソキサゾールである。] [0012] 米国特許第6,218,054号(ウェバー(Webber))には、ジオキソラン系溶媒とジメトキシエタン系溶媒とを約1:3の重量比(ジオキソラン1重量部対ジメトキシエタン3重量部)で含む、電解質溶媒系が開示されている。] [0013] 米国特許第6,849,360 B2号(マープル(Marple))には、Li/FeS2電池に特有の好ましい電解質が開示されており、この電解質には、1,3−ジオキソラン(DX)(63.05重量%)と1,2−ジメトキシエタン(DME)(27.63重量%)と少量の3,5ジメチルイソキサゾール(DMI)(0.18重量%)とを含む有機溶媒混合物に溶解されたヨウ化リチウム塩が含まれている(6段目、44〜48行)。電解質は、一般に、セパレータを間に含んだ乾燥アノード/カソードらせん状物を電池ケーシングに挿入した後で、電池に添加される。] [0014] 米国特許出願公開第2007/0202409 A1号(ヤマカワ(Yamakawa))には、33段落目に、Li/FeS2電池用の電解質溶媒に関して、「有機溶媒の例としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、スルホラン、アセトニトリル、ジメチルカーボネート、及びジプロピルカーボネートが挙げられ、それらのうちいずれか1つあるいはそれらのうち2つ以上を単独で又は混合溶媒の形態で使用することができる。」と記載されている。] [0015] かかる記載は誤解を招く恐れがある。というのも、当該技術は、電解質溶媒類の特定の組み合わせのみが、溶媒に溶解される特定のリチウム塩に応じてLi/FeS2電池に使用できることを示しているためである。(例えば、米国特許第5,290,414号及び米国特許第6,849,360号を参照のこと。)引例ヤマカワには、上記リストに基づく溶媒類の組み合わせはいずれか特定のリチウム塩と共に使用されるべきか示されていない。] [0016] 従来のFeS2粉末類、例えばケムトール社(Chemetall GmbH)製のパイロックス・レッド(Pyrox Red)325粉末は、粉末の酸性度の増強を弱める又は遅延させるために、その中にpH上昇添加剤類を含むものが通常入手可能である。かかる添加剤類は、炭酸カルシウム(CaCO3)又はその他の化合物類と結合した炭酸カルシウムを含有すると考えられている。かかる炭酸カルシウムは、FeS2粉末に加えられて、それが周囲空気中で保存されて酸素及び水分にさらされているときに、粉末の内部又は粉末表面上に酸性不純物類を形成させないようにする。これは、FeS2がカソード混合物中での使用を意図されているのか、又はその他の用途、例えば車のブレーキ製造における添加剤として意図されているのかに関わらない。] 先行技術 [0017] 米国特許第4,794,057号 米国特許第4,707,421号 米国特許第5,290,414号 米国特許第6,849,360 B2号 米国特許第6,218,054号 米国特許出願公開第2007/0202409 A1号 米国特許第6,849,360号] 発明が解決しようとする課題 [0018] アノードからカソードへ通過するリチウムイオンのイオン移動度を向上させ、その結果、電池の性能及び速度能力を増強させる、Li/FeS2電池用の電解質を見い出すことが求められている。] [0019] 電解質溶媒類の重合機会を軽減し、更には、リチウムアノード上への有害なパッシベーション層の蓄積速度をも減速させる、電解質用の添加剤類を見い出すことも求められている。] [0020] 電池がデジタルカメラに電力供給するための充電式電池の代用品として使用できるほど優れた速度性能を有する、一次(非充電式)Li/FeS2電池を製造することも求められている。] 課題を解決するための手段 [0021] 本発明は、アノード活物質としてリチウム又はリチウム合金を含むアノード、カソード活物質として二硫化鉄(FeS2)を含むカソードを有する、一次電気化学電池を目的とする。アノードとカソードを典型的に、それらの間のセパレータシートと共にらせん状に巻き付けることで、電極アセンブリが形成される。電解質溶液は、巻き付けられた電極アセンブリを電池ケーシングに挿入した後で電池に加える。電解質には、典型的に、有機溶媒混合物に溶解されたリチウム塩が含まれている。好ましい電解質溶液には、ジオキソラン(DX)とジメトキシエタン(DME)とスルホランとの混合液中に溶解されたヨウ化リチウム(LiI)塩の混合物が含まれている。ジオキソランは、好ましくは1,3−ジオキソランである。用語ジオキソランには、アルキル置換ジオキソラン類が包含されてもよいと理解すべきである。好ましいジメトキシエタンは、1,2−ジメトキシエタンである。スルホランが明らかに好ましいが、スルホランの代わりに、同様の高誘電率を有する他の溶媒を用いることも可能である。かかる溶媒類は、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、3−メチル−2−オキサゾリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルサルファイト、エチレングリコールサルファイト、アセトニトリル、N−メチルピロリジノン、又はこれらの組み合わせである。] [0022] 主な態様において、Li/FeS2電池用の本発明の電解質配合物には、ジオキソランとジメトキシエタンとスルホランとを含む溶媒混合物に溶解したヨウ化リチウム塩が含まれており、ジオキソランとジメトキシエタンとの重量比は、約0.82〜9.0、望ましくは約0.82〜2.3の範囲内である。ジオキソランは、好ましくは1,3−ジオキソランであるが、アルキル置換ジオキソラン類も同様に包含してもよい。好ましいジメトキシエタンは、1,2−ジメトキシエタンであるが、他のグリム類もまた使用可能である。本発明の電解質配合物中のスルホラン含量は、好ましくは溶媒混合物の約4.8重量%超を構成する。好ましくは、スルホランは、溶媒混合物の約4.8〜6.0重量%超を構成する。しかし、スルホランはまた、より大量に、例えば上記溶媒混合物の約25重量%まで含まれていてもよく、この溶媒混合物中のジオキソランとジメトキシエタンとの重量比も約0.82〜9.0の範囲内である。電解質は更に、所望により、3,5−ジメチルイソキサゾール(DMI)をも溶媒混合物の約0.1〜1重量%の量で包含する。(ジメチルイソキサゾールは、他のルイス塩基と同様に、ジオキソランの重合抑制に役立つ。)ヨウ化リチウムは、典型的に、溶媒混合物中に、1リットル当たり約0.8モルの濃度で含まれている。電解質は、望ましくは約0.9〜1.5センチポアズの粘度を有する。] [0023] Li/FeS2電池用の本発明の電解質中の水分含量は、典型的には、全電解質100万部当たり約100部未満であってよい。ただし、本発明の電解質配合物を用いた本明細書中に報告される好ましい試験結果に基づいて、全電解質中の水分含量は、100ppm超であってもよい。更に、水(脱イオン水)は電解質溶媒類に添加することができることから、Li/FeS2電池用の電解質中の水分含量は、約1000ppmまで、最大約2000ppmまでであってよいとも考えられる。(同一出願人による、2008年1月23日出願の特許出願第12/009858号を参照のこと。)したがって、本発明の電解質中の水分含量は、約100〜1000ppm、例えば約500〜1000ppm、又は約600〜1000ppm、及び約2000ppまで、例えば約600〜2000ppmであってもよいと考えられる。電解質中の水分含量の好ましい量は、約100〜300ppmである。] [0024] 本発明は、アノードがリチウム金属を含む、一次リチウム電池を目的とする。リチウムは、少量の他の金属、例えば、アルミニウムとの合金であってもよく、典型的に、約1又は2重量%未満のリチウム合金を含む。アノード活物質を形成するリチウムは、好ましくは薄い箔の形態である。電池は、カソード活物質である、一般に「黄鉄鉱」として知られる二硫化鉄(FeS2)を含むカソードを有している。電池は、ボタン型(コイン)電池の形態であっても、又は平板状電池の形態であってもよい。望ましくは、電池は、アノードシートとカソード複合材料シートとをそれらの間のセパレータと共にらせん状に巻き付けて構成される、らせん状の巻線型電池の形態であってもよい。カソードシートは、スラリープロセスを用いて、二硫化鉄(FeS2)粒子と炭素粒子とを含むカソード混合物を基材上、好ましくは導電性金属基材上にコーティングして、製造される。FeS2粒子と炭素粒子とは、望ましくはエラストマー、好ましくはスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(SEBS)ブロックコポリマー、例えばクレイトン(Kraton)G1651エラストマー(テキサス州ヒューストン(Houston)のクレイトン・ポリマーズ(Kraton Polymers))を用いて基材に結合される。このポリマーは、被膜形成剤であり、FeS2粒子のみならずカソード混合物中の導電性炭素粒子添加剤に対しても良好な親和性及び凝集特性を有する。ポリマーは、電解質による化学的侵食を食い止める。] [0025] カソードは、二硫化鉄(FeS2)粉末と、導電性炭素粒子と、結合剤物質と、溶媒と、を含むカソードスラリーから形成される。(用語「スラリー」は、本明細書で使用するとき、その通常の辞書の意味を有しており、そしてひいては固体粒子を含む湿式混合物をも表すと解されよう。)湿式カソードスラリーを、好ましくは、アルミニウム又はステンレス鋼のシートのように導電性の基材上にコーティングする。基材は、カソード集電体として機能する。次に溶媒を蒸発させて、二硫化鉄物質と炭素粒子、好ましくはカーボンブラックを包含するものとを互いに接着結合させ、そして、好ましくは基材の両面に結合した、乾燥コーティングとも接着結合させて構成される乾燥カソードコーティング混合物から形成されるカソード複合体を残す。その結果、リチウム又はリチウム合金のシート、カソード複合体シート、並びにそれらの間のセパレータ、を備える、電極アセンブリが形成される。電極アセンブリは、好ましくはらせん状に巻き付けられて、電池ケーシングに挿入される。次に、電解質溶液を電池ケーシングに流し入れ、そしてエンドキャップを覆うようにして電池を曲げて閉じる。] [0026] 前放電(制限ドレイン)プロトコルは、Li/FeS2電池に有益に適用することができる。かかるプロトコルは、好ましくは新品の電池が製造された時点から24時間(1日)以内に適用される。パルス方式の前放電プロトコルは、アノード上での不動態層の抵抗を下げることができる、すなわち、アノード上での有害な不動態層の蓄積速度を減速させ、それによって電池性能を増強させることができることが確かめられた。この有益な結果は、特に電池が、約100〜2000ppm、例えば約600〜2000ppm、又は約600〜1000ppm、好ましくは約100〜300ppmの水分含量を有する上述の電解質系を含有する場合に現れる可能性がある。] [0027] 巻き付けられた電極アセンブリを有する単三サイズの円筒形Li/FeS2電池に適用されるような前放電プロトコルは、次の通りである。] [0028] 少なくとも2サイクルのパルスサイクルを順に適用する。ここで、各パルスサイクルには、 i)約1〜3アンペアの電流ドレインを電池に約2〜20秒間加える工程と、 ii)電池を、次の電流ドレインまで約10〜100秒間休止させる工程と、が含まれる。] [0029] 好ましくは、各パルスサイクル中に適用される電流ドレインは、約1.5〜2.5アンペアである。順に適用されるパルスサイクル数は、約2〜100サイクル、好ましくは約20〜40サイクルであり得る。この前放電プロトコルで除去される総容量(ミリアンペア−時)は、電池の初期容量の2〜10%である。] 図面の簡単な説明 [0030] 円筒形電池の実施形態で表されるような、本発明の改良されたLi/FeS2電池の等角図。 ボタン型電池の実施形態で表されるような、本発明の改良されたLi/FeS2電池の断面図。 電池の上部及び内部を示すために図1の透視線2−2で切断された、電池の部分横断立面図。 らせん状に巻き付けられた電極アセンブリを示すために図1の透視線2−2で切断された、電池の部分横断立面図。 電極アセンブリを構成する層の配置を示す模式図。 図4の電極アセンブリの平面図であって、その下にある層が見えるようにそれら各層を部分的に剥離した平面図。] 図1 図4 [0031] 本発明のLi/FeS2電池は、平板状ボタン型電池100の形態であっても、又はらせん状の巻線型電池10の形態であってもよい。試験用電池として使用されるボタン型(コイン)電池100の構成は、リチウムアノード150と二硫化鉄(FeS2)を含むカソード170とをそれらの間のセパレータ160と共に含むものであって、図1Aに示されている。] 図1A [0032] 電池100のようなLi/FeS2電池は、次の基本的な放電反応(一段階機構)を示す。 アノード: 4Li=4Li++4e− 式1 カソード: FeS2+4Li++4e−=Fe+2Li2S 式2 全体: FeS2+4Li=Fe+2Li2S 式3] [0033] ボタン型電池の説明 図1Aに示すLi/FeS2ボタン型電池100を実験用の試験ビヒクルとして使用したが、それは一次(非充電式)電池の形態であってもよい。「非充電式」とは、電池が、それが放電した後に破棄されることを意図されていることを意味する。ボタン型電池100(図1A)では、ディスク状の円筒形カソードハウジング130は、開口端部132と閉口端部138とを有する形をしている。カソードハウジング130は、好ましくはニッケルめっき鋼から形成される。電気絶縁部材140、好ましくは中空コアを有するプラスチック製の円筒形部材は、絶縁部材140の外面がハウジング130の内面と隣接し及びその内側を裏打ちするようにハウジング130に挿入されている。あるいは、ハウジング130の内面は、高分子材料でコーティングされていてもよく、この高分子材料が固化して絶縁体140となって、ハウジング130の内面と隣接する。絶縁体140は、様々な熱安定性の絶縁材料、例えばポリプロピレンから形成することができる。] 図1A [0034] 金属製グリッドを備えたカソード集電体115は、それがハウジング130の閉口端部138の内面と隣接するように電池に挿入することができる。カソード集電体115は、望ましくはエキスパンド加工されたステンレス鋼製の金属箔シートから構成されていてもよく、それが複数個の開口部を有するため、ステンレス鋼製のグリッド又はスクリーンが形成される。エキスパンド加工されたステンレス鋼金属箔は、デクスメット社(Dexmet Corp.)からエクスメット(EXMET)箔316L−SSとして入手可能である。ただし、好ましくは、カソード集電体115は、更に導電性の高いアルミニウムシートから構成される。(カソード終電体115は、マグネシウム、銅及び亜鉛等の一般的なアルミニウム合金用金属で合金化された、アルミニウムのシートであってもよい。)かかるアルミニウム集電体シート115は更に、複数個の開口部を有しており、そのためアルミニウムグリッドが形成される場合もある。カソード集電体115は、ハウジング130の閉口端部138の内面に溶接することができる。(所望により、同じ種類の集電体グリッド、好ましくは開口部を有するエキスパンド加工されたステンレス鋼製の金属箔を、アノードカバー120の閉口端部の内面に溶接してもよい。)グラファイトとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)結合剤との混合物を含む任意の導電性炭素ベース層172を、カソード集電体115に圧縮することもできる。FeS2活性粒子類を含むカソード物質170を、次に、かかる導電性ベース層172に押し込んでもよい。これは、「多段」カソード構造と称される場合がある。] [0035] カソード物質170は、カソード活物質として二硫化鉄(FeS2)又は二硫化鉄(FeS2)を包含する任意の混合物を含んでおり、それが集電体シート115の上に重なるように任意の導電性ベース層172上に付着してもよい。カソード層170中のカソード活物質、すなわち、有用な電気化学反応を受ける物質は、完全に二硫化鉄(FeS2)から構成することができる。その中に分散された二硫化鉄(FeS2)粉末を含むカソード170は、スラリーの形態で調製することができ、そのスラリーは、導電性の金属箔、好ましくは、アルミニウム箔又はステンレス鋼箔の両面にコーティングしてよい。かかるアルミニウム箔又はステンレス鋼箔は、それを貫通する開口部を有するため、グリッド又はスクリーンが形成されてもよい。あるいは、その中に分散された二硫化鉄(FeS2)粉末を含むカソード170は、スラリーの形態で調製することができ、そのスラリーは、アルミニウム箔又はステンレス鋼箔のセパレータ160と対向する面にだけコーティングされる。どちらの場合も、上述のように導電性ベース層172を使用してもよく、その場合、カソード170は、図1Aに示すようにそれが導電性ベース層172上に重なるように電池に挿入される。] 図1A [0036] あるいは、その中に分散された二硫化鉄(FeS2)粉末を含むカソード170は、スラリーの形態で調製することもでき、そのスラリーは、導電性基材シート115上に直接コーティングすることでカソード複合体を形成してもよい。好ましくは、導電性基材シート115は、上述のようにアルミニウム(又はアルミニウム合金)のシートから形成されており、そこに複数個の小さな孔を有するために、グリッドが形成される場合がある。あるいは、導電性基材シート115はステンレス鋼のシートであってよく、望ましくは、複数の小さな孔が開いた、エキスパンド加工されたステンレス鋼製金属箔の形態であってもよい。] [0037] カソードスラリーは、結合剤(テキサス州ヒューストンのクレイトン・ポリマーズ(Kraton Polymers)製クレイトン(Kraton)G1651エラストマー結合剤)を2〜4重量%と、活性なFeS2粉末を50〜70重量%と、導電性炭素(カーボンブラック及びグラファイト)を4〜7重量%と、溶媒(類)を25〜40重量%と、を含む。(カーボンブラックには、アセチレンブラック炭素粒子が全体的に又は部分的に包含されていてよい。)したがって、カーボンブラックという用語は、本明細書で使用するとき、カーボンブラック及びアセチレンブラック炭素粒子にまで広がり、及びそれらを包含すると理解すべきである。)クレイトン(Kraton)G1651結合剤は、エラストマーブロックコポリマー(スチレン−エチレン/ブチレン(SEBS)ブロックコポリマー)であって、皮膜形成剤である。この結合剤は、活性FeS2及びカーボンブラック粒子に対して十分な親和性を有することから、湿式カソードスラリーの調製を促進し、また溶媒を蒸発させた後でこれら粒子を互いに接触させたままにする。FeS2粉末の平均粒径は、約1〜100マイクロメートル、望ましくは約10〜50マイクロメートルであってよい。望ましいFeS2粉末は、ケムトール社(Chemetall GmbH)から取引標記パイロックス・レッド(Pyrox Red)325粉末として入手可能であり、FeS2粉末の粒径は、その粒子がタイラー(Tyler)メッシュ寸法325(ふるい目0.045mm)のふるいを通過するほど十分に小さい。(325メッシュふるいを通過しないFeS2粒子の残量は、最大10%である。)グラファイトは、ティムカル社(Timcal Ltd.)から取引標記ティムレックス(Timrex)KS6として入手可能である。ティムレックス(Timrex)グラファイトは、非常に結晶性の高い合成グラファイトである。(他のグラファイト類を使用してもよく、天然、合成又はエキスパンド加工されたグラファイト、及びこれらの混合物から選択されてよいが、その高純度を理由に、ティムレックス(Timrex)グラファイトが好ましい。)カーボンブラックは、取引表記スーパーP(Super P)導電性カーボンブラック(BET表面62m2/g)としてティムカル社(Timcal Co.)から入手可能である。] [0038] 溶媒類としては、好ましくは、シェルソル(ShellSol)A100炭化水素溶媒(シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.))として入手可能なC9〜C11(主としてC9)芳香族炭化水素類の混合物、及びシェルソルOMS炭化水素溶媒(シェル・ケミカル社)として入手可能な主としてイソパラフィン類(平均M.W.166、芳香族化合物含有量0.25重量%未満)の混合物が挙げられる。シェルソル(ShellSol)A100溶媒とシェルソルOMS溶媒との重量比は、望ましくは重量比4:6である。シェルソル(ShellSol)A100溶媒は、大部分は芳香族炭化水素(芳香族炭化水素90重量%超)、主にC9〜C11芳香族炭化水素を含有する、炭化水素混合物である。シェルソル(ShellSol)OMS溶媒は、0.25重量%未満の芳香族炭化水素含有量を含むイソパラフィン炭化水素(イソパラフィン98重量%、M.W.約166)の混合物である。スラリー配合物は、二重遊星ミキサーを用いて分散してもよい。乾燥粉末は、最初にブレンドして確実に均一にしてから、混合ボウル内の結合剤溶液に添加する。] [0039] 好ましいカソードスラリー混合物を表1に示す。] [0040] 湿式カソードスラリー170は、間欠式ロールコーティング法を用いて集電体115に適用する。この同一又は同様の湿式カソードスラリー混合物(電池に未だ添加されていない電解質)については、同一出願人による、2006年9月6日に出願された特許出願第11/516,534に開示されている。湿式カソードスラリー混合物170の総固形分は、上記表1に示すように、66.4重量%である。したがって、乾燥カソード中のアセチレンブラック含有量は2.26重量%、また、乾燥カソード中のグラファイト含有量は6.02重量%となり得る。] [0041] 上述のように、集電体シート115には、所望により炭素ベース層172でプレコートしてから、湿式カソードスラリーを適用する。金属基材115上にコーティングされたカソードスラリーを、オーブン内において初期温度40℃〜最終温度約130℃までの温度に徐々に調節又は昇温して、溶媒が全て蒸発するまで乾燥させる。(カソードスラリーをこの方法で乾燥することにより、クラッキングが回避される。)これにより、FeS2と炭素粒子類と結合剤とを含む乾燥カソードコーティング170が金属基材115上に形成される。コーティングされたカソードを、続いて、カレンダ処理ロールの間に通過させて、所望のカソード厚さを達成する。乾燥カソードコーティング170の代表的な望ましい厚さは、約0.172〜0.188mm、好ましくは約0.176mmである。それゆえに、乾燥カソードコーティング170は次の望ましい配合を有する。FeS2粉末(89重量%)、結合剤(クレイトン(Kraton)G1651)3重量%、グラファイト(ティムレックス(Timrex)KS6)6重量%、及びカーボンブラック(スーパーP((Super P))2重量%。カーボンブラック(スーパーP(Super P)カーボンブラック)は、炭素の網状組織を作り出して、導電性を改善する。] [0042] 集電体シート115とカソードベース層172とその上の乾燥カソードコーティング170とを備えるカソード複合体を、次に、カソードハウジング130に挿入してよい。ミクロポアを有するポリプロピレンを好ましく含むセパレータシート160を、次に、カソードコーティング170上に付着してもよい。] [0043] Li/FeS2電池用の電解質は、次に、それがセパレータシート160及びカソード層170に完全に浸透するように添加してもよい。電解質混合物は、それがセパレータとカソードコーティングとに吸収されるように添加することができる。電解質は、有機溶媒に溶解されたリチウム塩又はリチウム塩の混合物を含む。電解質混合物は、望ましくは、アノードと対向するFeS2 1グラム当たり電解質溶液約4グラムを基準として添加される。] [0044] 前記電池用の本発明の電解質には、ジオキソランとジメチルオキシエタンとスルホランとを含む有機溶媒混合物に溶解したヨウ化リチウム塩が含まれており、ジオキソランとジメトキシエタンとの重量比は、約0.82〜9.0、望ましくは約0.82〜2.3の範囲内である。ジオキソランは、好ましくは1,3−ジオキソランであるが、アルキル置換ジオキソラン類も同様に包含されてもよい。好ましいジメトキシエタンは、1,2−ジメトキシエタンである。スルホランは、好ましくは溶媒混合物の約4.8重量%超を構成する。好ましくは、スルホランは、溶媒混合物の約4.8〜6.0重量%を構成する。電解質は、望ましくは約0.9〜1.5センチポアズの粘度を有する。] [0045] アノード材料の層150、典型的にはリチウム又はリチウム合金のシートを、次にセパレータシート160の上に配置してもよい。好ましくはニッケルめっき鋼から形成されたアノードカバー120を、ハウジング130の開口端部132に挿入し、そしてハウジング130の周辺縁部135を、絶縁部材140の露出した絶縁材の縁部142を覆うように折り曲げる。周辺縁部135を絶縁材の縁部142と嵌合させることでハウジング130を閉じて、中の電池内容物類をしっかりと密封する。アノードカバー120は、電池の負極端子としても機能し、また、閉口端部138部分のハウジング130は、電池の正極端子として機能する。] [0046] FeS2を含むカソードを有する、 実験用の試験リチウムボタン型電池 実験用の試験Li/FeS2コイン電池類100(図1A)は、次のようにして調製した。] 図1A [0047] 実験用の試験電池アセンブリ: ニッケルめっき鋼製のコイン型カソードハウジング130と、ニッケルめっき鋼製のコイン型アノードハウジング(カバー)120とを、図1Aに示されたものと同様の構造で形成する。完成した電池100は、全径が約25mm及び厚さが約3mmであった。カソードハウジング130内のFeS2の重量は約0.13gであり、これは、アルミニウム基材シート115の両面を覆っていた。この試験用電池100では、アノードと対向する、アルミニウム基材シート115のカソード側のみが放電可能であることから、活性なFeS2の量、すなわち実際に放電可能な量は、約0.065gである。リチウムは、カソードに関しては理論容量を超過していた。] 図1A [0048] 各電池100の形成には、19.8mm(0.780インチ)ダイを有するアーバー(Arbor)プレスを用いて、2枚のステンレス鋼グリッド(316L−SSエクスメット(EXMET)エキスパンド加工された金属箔)を打ち抜いた。一方のステンレス鋼グリッドをコイン電池のカソードハウジング130の内側の中央に置いて、カソード集電体シート115を形成した。もう一方のステンレス鋼グリッド(図示せず)は、アノードハウジング(カバー)120の閉口端部の内面に抵抗溶接した。これらグリッドは、それらのそれぞれのハウジングに、ヒューズ(Hughes)対向先端ピンセット型溶接機を用いて溶接した。溶接機は、20ワット−秒及び中程度のパルスに設定した。形成された溶接部は、メッシュストランドの交点を覆って、グリッドの周辺付近に規則正しく間隔を空けて位置していた。各電池では、グリッド1つ当たり6〜8個の溶接部を形成した。] [0049] 続いて、プラスチック製の絶縁ディスク(グロメット)140を、アノードカバー120の縁部に付着した(図1A)。厚さ0.813mm(0.032インチ)のリチウム金属シートで形成されたリチウムディスク150は、ドライボックス内でアーバー(Arbor)プレスと直径19.1mm(0.75インチ)のハンド・パンチを用いて打ち抜いた。リチウムディスク150は、電池のアノードを形成するものであり、次に、アノードカバー120の閉口端部の内面と対向するステンレス鋼グリッド上に、アーバー(Arbor)プレスを用いてプレス加工した。] 図1A [0050] ミクロポアを有するポリプロピレン製セパレータ160(セルガード社(Celgard, Inc.)製のセルガード(Celgard)CG2400セパレータ)を20.3cm(8インチのストリップ)に切断し、直径23.8mm(0.9375インチ)のハンド・パンチを用いて打ち抜いて、用意しておいた。] [0051] カソード導電性ベース層172は、次のようにして調製した。] [0052] グラファイト(ティムレックス(Timrex)KS6グラファイト)75gとテトラフルオロエチレン(テフロン(Teflon))粉末25gとをタンブラー(重り付き)に入れて、フード内で一晩運転した。内容物をブレンダー(一度に約10g(~ 10 g)づつ)に加えて、「高」で1分間ブレンドした。混合された内容物を容器に流し込み、ラベルをつけて、使える状態になるまで貯蔵した。カソードベース層172の適用準備が整ったところで、カソードハウジング130をダイに入れた。カソードベース層172(0.500g)をステンレス鋼グリッド115上に、カーバー(Carver)液圧プレスに接続されたラムを用いて密着させた。カソードベース層172の組成は、グラファイト75重量%及びテフロン(Teflon)粉末25%であった。] [0053] 続いて、カソードスラリーを調製して、アルミニウムシート(図示せず)の片面にコーティングした。二硫化鉄(FeS2)を含むカソードスラリーの構成成分を合わせて、次の割合で混合した。] [0054] FeS2粉末(58.9重量%)、結合剤・スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンエラストマー(クレイトン(Kraton)G1651)(2重量%)、グラファイト(ティムレックス(Timrex)KS6)(4.0重量%)、カーボンブラック(スーパーP(Super P)カーボンブラック)(1.5重量%)、炭化水素溶媒・シェルソル(ShellSol)A100溶媒(13.4重量%)及びシェルソルOMS溶媒(20.2重量%)。] [0055] アルミニウムシート上の湿式カソードスラリー(図示せず)を次に、40℃〜130℃のオーブンにおいて、カソードスラリー中の溶媒が全て蒸発するまで乾燥させることで、FeS2と導電性炭素とエラストマー結合剤とを含む乾燥カソードコーティング170がアルミニウムシートの片面に形成された。カソードコーティング170を支えるアルミニウムシートは、20マイクロメートル厚のアルミニウム箔であった。続いて、同じ組成の湿式カソードスラリーをアルミニウムシートの反対の面上にコーティングして、同様に乾燥させた。アルミニウムシートの両面上の乾燥カソードコーティングをカレンダ処理することで、合計最終厚さ約0.176mmの乾燥カソード170を形成した。これには、20マイクロメートル厚のアルミニウム箔が包含されている。乾燥カソードコーティング170は、次の組成を有していた。] [0056] FeS2粉末(88.71重量%);結合剤クレイトン(Kraton)G1651エラストマー(3.01重量%);導電性炭素粒子、グラファイトであるティムレックス(Timrex)KS6(6.02重量%)、及びカーボンブラック、スーパーP(Super P)(2.26重量%)。] [0057] アルミニウムシートの両面にコーティングされた乾燥カソードコーティング170からなる複合体を、次に、カソードハウジング130内の炭素ベース層172上に打ち付けた。これは、カソードハウジング130をダイの内部に入れることによって行った。両面に乾燥カソードコーティング170をコーティングしたアルミニウムシートからなる複合体は、切断して大きさを調整することで、ハウジング130内のカソードベース層172上に直線状に配列された。その後、ハウジング130を保持するダイにラムを挿入して、ダイを液圧プレスまで移動させた。プレスを用いて4メートルトンの力を加えて、複合体がカソードベース層172と密着するように複合体をカソードハウジング130に打ち付けた。その後、ダイを転倒させて、ハウジング130をダイから静かに取り外した。露出したカソード層170の表面は、平滑なムラの無い質感を有していた。完成したカソードコインを、次に、真空オーブンに入れて、150℃で16時間加熱した。] [0058] 実験データ 実験1: 対照電池群及び試験電池群のボタン型(コイン)電池類100は、上述と同様にして作製した。対照群の電池類は、次の電解質を有していた。] [0059] 次の対照電解質を含む対照電池群: リチウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、Li(CF3SO2)2Nこれは、本明細書ではLiTFSIとして参照されており、0.8モル/リットルの濃度をもたらすものであって、1,3−ジオキソラン(DX)(80体積%)とスルホラン(20体積%)とピリジン(PY)800ppmとを含む溶媒混合物に溶解した。電解質は、電解質100万重量部当たり50重量部(ppm)未満の水を含有していた。] [0060] 最初の試験群、すなわち試験電池群Iの電池類は、対象電池群と比べて異なる電解質配合物を試験電池群Iで用いたこと以外は、構造及びアノード/カソード組成(コイン電池100)が同一であった(対照電池類も包含する)。試験電池群Iのコイン型電池類100は、次の、本発明の異なる電解質組成を有していた。] [0061] 次の電解質配合物Iを含む試験電池群I: 電解質配合物I:0.8モル/リットルの濃度をもたらすヨウ化リチウム(LiI)を、1,3−ジオキソラン(DX)(42.6重量%)と1,2−ジメトキシエタン(DME)(52.1重量%)とスルホラン(5.3重量%)とを含む溶媒混合物に溶解した。溶媒混合物には、更に3,5−ジメチルイソキサゾール(DMI)(0.2重量%)も含有されていた。脱イオン水を溶媒混合物に添加したことにより、電解質100万重量部当たり約120重量部(ppm)の水の、全電解質中の水分含量を含む電池類が作製された。] [0062] 第2の試験群、すなわち試験電池群IIの電池類は、別の電解質配合物を試験電池群IIで用いたこと以外は、試験電池群I及び対照電池と同一であった。試験電池群IIは、次に示す本発明の別の電解質配合物を用いて作製した。] [0063] 電解質配合物IIを含む試験電池群II: リチウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、Li(CF3SO2)2N電解質配合物II:0.8モル/リットルの濃度をもたらすヨウ化リチウム(LiI)を、1,3−ジオキソラン(DX)(66.5重量%)と1,2−ジメトキシエタン(DME)(28.5重量%)とスルホラン(5.0重量%)とを含む溶媒混合物に溶解した。溶媒混合物には、更に3,5−ジメチルイソキサゾール(DMI)(0.2重量%)も含有されていた。脱イオン水を溶媒混合物に添加したことにより、電解質100万重量部当たり約270重量部(ppm)の水の、全電解質中の水分含量を含む電池類が作製された。] [0064] 実験2: 実験#1中の電解質配合物1と同一の、対照電池群及び試験電池群用の電解質配合物を用いて、電池類を作製した。] [0065] したがって、実験2における対照電池類及び試験電池群の電池全てに関する電解質は、次の組成であった。0.8モル/リットルの濃度をもたらすヨウ化リチウム(LiI)を、1,3−ジオキソラン(DX)(42.6重量%)と1,2−ジメトキシエタン(DME)(52.1重量%)とスルホラン(5.3重量%)とを含む溶媒混合物に溶解した。溶媒混合物には、更に3,5−ジメチルイソキサゾール(DMI)(0.2重量%)も含有されていた。脱イオン水を溶媒混合物に添加したことにより、約120ppmの水の、全電解質中の水分含量を含む電池類が作製された。] [0066] 前放電プロトコル 実験#1の電池群(対照群電池類、試験電池群I及び試験電池群II)のための前放電(制限ドレイン)プロトコル: 実験#1における新品の電池類全て、すなわち実験#1の対照電池、試験電池群I及び試験電池群IIを、次の前放電スケジュールに付した。前放電スケジュールは、連続27サイクルの放電パルスサイクルであり、各パルスサイクルは、35ミリアンペアで7秒間のパルスと、その後の断続的なパルス休止22秒間と、から成り立っていた。この前放電スケジュールは、新品のコイン型電池類100が作製されてから約1日以内に適用した。したがって、用語「前放電プロトコル」は、それを本明細書で使用するとき、新品の電池が作製された直後に、すなわち電池が作製されてから約1日以内に電池に適用される、制限ドレインプロトコルである。したがって、前放電(制限ドレイン)プロトコルは、新品の電池が作製されてから約1日以内であって及び電池が商業目的に利用される前に適用される。] [0067] 実験#2の対照群の電池類のための前放電(制限ドレイン)プロトコル: 新品の対照電池類を、上記スケジュールによって前放電した。この前放電スケジュールは、連続27サイクルの放電パルスサイクルであり、各パルスサイクルは、35ミリアンペアで7秒間のパルスと、その後の断続的なパルス休止22秒間と、から成り立っていた。この前放電スケジュールを、新品のコイン型電池類100が作製されてから約1日以内に適用した。] [0068] 実験#2の試験電池群のための前放電(制限ドレイン)プロトコル: 実験#2の新品の試験電池類は、0.6ミリアンペアの定電流によって3時間前放電することで、対照電池類のためのパルス前放電スケジュールによって除去されたのとほぼ同じ容量(ミリアンペア−時)を除去した。この前放電スケジュールを、新品のコイン型電池類100が作製されてから約1日以内に適用した。] [0069] 加速保存 新品の電池類を上記のそれぞれの前放電プロトコルに付した後、各電池群、すなわち実験#1の対照電池群及び実験#2の対照電池群、並びに実験#1の全試験電池類及び実験#2の全試験電池類を、加速保存(60℃で5日)に付した。] [0070] インピーダンス測定 加速保存後の実験#2の対照電池群及び試験電池群を、複素インピーダンス測定に付した。対照電池群と試験電池群はいずれも、実験#2の説明において上述されたものと同じ電解質を有していた。すなわち、 0.8モル/リットルの濃度をもたらすヨウ化リチウム(LiI)を、1,3−ジオキソラン(DX)(42.6重量%)と1,2−ジメトキシエタン(DME)(52.1重量%)とスルホラン(5.3重量%)とを含む溶媒混合物に溶解した。溶媒混合物には、更に3,5−ジメチルイソキサゾール(DMI)(0.2重量%)も含有されていた。電解質100万重量部当たり100重量部(ppm)超の水の、全電解質中の水分含量を含む電池類が作製された。] [0071] 各コイン電池の複素インピーダンスは、ソーラートロン電気化学インターフェース(Solartron Electrochemical Interface)1287と周波数応答分析器(Frequency Response Analyzer)1255とを用いて測定した。この測定から、リチウム不動態層の抵抗が算出できる。電池のインピーダンスは、電池の内部抵抗、要するにリチウムパッシベーション層の抵抗を表している。] [0072] デジタルカメラの加速模擬試験 前記実験1及び2に記載の電池全てを、次のパルス試験プロトコルからなるデジタルカメラ加速模擬試験に付した。各パルスサイクルは、どちらも26ミリワットパルスで2秒間のパルスからなる2サイクルの中間サイクルと、その直後の12ミリワットで28秒間のパルスと、から成り立っていた。これらパルスサイクルは、1.05ボルトのカットオフ電圧に達するまで繰り返した。] [0073] 電池の放電は、マッコール(Maccor)4000循環装置で行った。電池類は、上記デジタルカメラ模擬放電試験を用いて、1.05ボルトの同じカットオフ電圧まで放電した。試験結果を次の通り報告する。] [0074] デジタルカメラ模擬試験の結果 実験#1の電池類−デジタルカメラ模擬試験 以下は、実験#1の対照電池群、試験電池群I及び試験電池群IIに関し、電池を前記デジタルカメラ模擬試験によって1.05まで放電したときの、達成された平均パルスサイクルである。これら電池類はいずれも、実験#1の電池類用の前記の前放電プロトコル及び加速保存プロトコルに付した後で放電した。(各電池群は、およそ5〜7個の電池で構成されていた。) 対照電池群:1.05ボルトのカットオフまで540.7パルスサイクル(平均)。 試験電池群I:1.05ボルトのカットオフまで582.8パルスサイクル(平均)。 試験電池群II:1.05ボルトのカットオフまで569.4パルスサイクル(平均)。] [0075] 実験#2の電池類−デジタルカメラ模擬試験 以下は、実験#2の対照電池群、試験電池群に関し、電池を前記デジタルカメラ模擬試験によって1.05まで放電したときの、達成された平均パルスサイクルである。これら電池類はいずれも、実験#2のための電池類を前記の前放電プロトコル及び加速保存プロトコルに付した後で放電した。(各電池群は、およそ6〜7個の電池で構成されていた。) 対照電池群:1.05ボルトのカットオフまで582.8パルスサイクル(平均)。 試験電池群:1.05ボルトのカットオフまで555.6パルスサイクル(平均)。] [0076] 実験#2−電池のインピーダンス測定値(アノード不動態層の抵抗) リチウムアノード不動態層の抵抗は、電池の内部抵抗の測度である、電池のインピーダンス測定値で表される。電池インピーダンスは、実験#2の電池類について次の通り記録された。 対照電池群:インピーダンス−アノード不動態層の抵抗、5.8オーム(平均インピーダンス)、デジタルカメラ加速模擬放電試験でのパルスサイクル数1.05ボルトのカットオフまでに582.8サイクル(平均)。 試験電池群:インピーダンス−アノード不動態層の抵抗、24.8オーム、デジタルカメラ加速模擬放電試験でのパルスサイクル数1.05ボルトのカットオフまでに555.6サイクル。] [0077] 試験結果から導き出される結論 実験#1では、試験結果は、対照電池群に比べて、試験電池群I及びIIが、より良好な放電性能(加速放電模擬試験)を示している。上述のように、対照電池群並びに試験電池群I及びIIの両者を、同じ前放電(制限ドレイン)プロトコルと同じ加速保存プロトコルに付した。試験電池群I及び試験電池群IIについての平均パルスサイクル数は、1.05ボルトのカットオフまでに平均540.7パルスサイクルであった対照電池群に比べて、1.05ボルトのカットオフまでに582.8パルスサイクル及び569.4パルスサイクルであった。試験電池群(試験電池群I及びII)はどちらも電解質中の水分含量が高く、すなわち、50ppm未満の水を有する対照電池類に比べて電解質中に100ppm超の水を有していた。にもかかわらず、試験電池類は、電池類を加速放電模擬試験に付したときに、対照電池類よりも良好な放電性能を示した。] [0078] このため、実験#1の試験電池群I及びIIにおける電解質配合物、すなわち、電解質配合物I及び電解質配合物IIはそれぞれ、対照電解質よりも有効な電解質であったと考えられる。] [0079] 電解質配合物Iは次の通りであった。0.8モル/リットルの濃度をもたらすヨウ化リチウム(LiI)を、1,3−ジオキソラン(DX)(42.6重量%)と、1,2−ジメトキシエタン(DME)(52.1重量%)とスルホラン(5.3重量%)とを含む溶媒混合物中に溶解した。溶媒混合物には更に、3,5−ジメチルイソキサゾール(DMI)(0.2重量%)も含有されていた。電解質配合物IIは、1,3−ジオキソラン(DX)(66.5重量%)と、1,2−ジメトキシエタン(DME)(28.5重量%)と、スルホラン(5.0重量%)とから構成されていた。溶媒混合物には更に、3,5−ジメチルイソキサゾール(DMI)(0.2重量%)も含有されていた。電解質配合物I及びIIはまた、電解質100万重量部当たり100重量部(ppm)超の水を含有していた。特に、脱イオン水を電解質配合物I及びIIに添加したことから、電解質配合物I中の水分含量は水120ppmであり、また、電解質配合物II中の水分含量は水270ppmであった。一方、対照電池類に含まれる電解質は、1,3−ジオキソラン(DX)とスルホランとを含む混合液中に溶解したLiTFSI塩の混合物で構成されており、50ppm未満の水を含んでいた。1,3−ジオキソラン(DX)(42〜67重量%)と1,2−ジメトキシエタン(DME)(28〜52重量%)とスルホラン(5〜6重量%)とを含む上記電解質配合物I及びIIは、電解質混合物全体として物質輸送特性が更に良好であるため、より一層有効な場合がある。これら電解質配合物中に水を加えたことで、水100ppm超の水分含量をもたらしたことはまた、電解質の増強された導電性の一因でもあり、その結果、更に優れた電池の放電性能の達成を促すことができると考えられる。] [0080] 実験#2では、対照電池群及び試験電池群に含まれる電解質は、同一、すなわち1,3−ジオキソラン(DX)(42.6重量%)と、1,2−ジメトキシエタン(DME)(52.1重量%)とスルホラン(5.3重量%)と更に3,5−ジメチルイソキサゾール(DMI)(0.2重量%)とを含む溶媒混合物中に0.8モル/リットルの濃度をもたらすヨウ化リチウム(LiI)を溶解したものであった。電解質100万重量部当たり約120重量部(ppm)の水の、電解質全体中の水分含量を含む電池類が作製された。] [0081] 実験#2の電池に関する試験結果には、新品の対照電池類に対して用いられたパルス前放電(パルス制限ドレイン)プロトコルが、同じ電解質を含む同じ新品の電池類、すなわち定電流前放電プロトコルに付されて同程度の電池容量を除去しただけの試験電池群に比べて、リチウムアノード上での有害なパッシベーション層の蓄積を軽減することが示されている。パルス前放電(パルス制限ドレイン)プロトコルのこの有利な効果は、上記実験データに示されており、パルス前放電に付された対照電池類における内部インピーダンス(アノードパッシベーション層の抵抗)はほんの5.8オームであり、定電流前放電に付され、平均インピーダンスが24.8オームであった試験電池類よりもはるかに低かった。(前放電プロトコルは更に、電池の製造直後、すなわち電池を製造してから1日以内に電池のOCV(開放電池電圧)が上昇する傾向も軽減した。)データからは、対照電池類の電解質中の水の存在(全電解質中>100pmmの水)と、これら電池類をパルス前放電プロトコルに付したこととの組み合わせにより、低いアノード不動態層抵抗の達成が促される、と推論される。対照電池類におけるパルス前放電プロトコルと電解質中の水の存在との組み合わせは、不動態層の組成変化をもたらすか又はその蓄積速度を減速させ、その結果、これら電池類内部の不動態層抵抗を低下させる可能性がある、と推論される。最終結果は、更に優れた電池放電性能であって、これは、1.05ボルトのカットオフまでを測定した場合、対照電池類で得られたパルスサイクル数(平均582.8サイクル)が試験電池類(555.6サイクル)よりも高いことで確認される。] [0082] 巻線型円筒形電池の説明 円筒形電池10は、図2〜5に示すように、アノードシート40、カソード複合体62、それらの間のセパレータシート50とを備える、らせん状に巻き付けられた電極アセンブリ70(図3)を有してもよい。Li/FeS2電池10の内部構造は、カソード組成が異なること以外は、米国特許第6,443,999号に示され、説明された、らせん状に巻き付けられた構造と同様であってもよい。図に示すように、アノードシート40は、リチウム金属、一般に黄鉄鉱として既知の二硫化鉄(FeS2)を含むカソードシート60とを含んでいる。電池は、好ましくは、図に示すように円筒形であり、いかなるサイズ、例えば、単五(42×8mm)、単四(44×9mm)、単三(49×12mm)、単二(49×25mm)、及び単一(58×32mm)サイズであってもよい。したがって、図1に示した電池10は、2/3A電池(35×15mm)であっても、又はその他の円筒形サイズであってもよい。ただし、それは、電池構造を円筒形に制限することを意図しているわけではない。あるいは、本発明の電池は、リチウム金属を含むアノード及び本明細書に記載されているようにして製造された二硫化鉄(FeS2)を含むカソードから形成される、らせん状に巻き付けられた電極アセンブリを、角柱状のケーシング内に挿入して有するものであってもよく、例えば、全体的に立方体形状の矩形の電池であってもよい。Li/FeS2電池は、らせん状に巻き付けられた構造に限定されないが、アノードとカソードを、例えば、上述のようにコイン電池内で使用するために積み重ねて配置してもよい。] 図1 図2 図3 図4 図5 [0083] らせん状の巻線型電池の場合、電池ケーシング(ハウジング)20の好ましい形は、図1に示すような円筒形である。ケーシング20は、好ましくはニッケルめっき鋼から形成される。電池ケーシング20(図1)は、連続的な円筒形表面を有する。アノード40及びカソード複合体62と共に、それらの間のセパレータ50とを備える、らせん状に巻き付けられた電極アセンブリ70(図3)は、平板状の電極複合体13(図4及び5)をらせん状に巻き付けることによって調製することができる。カソード複合体62は、金属基材65上にコーティングされた二硫化鉄(FeS2)を含むカソード層60を備えている(図4)。] 図1 図3 図4 [0084] 電極複合体13(図4及び5)は、次の方法で製造することができる。本発明の方法によれば、内部に分散した二硫化鉄(FeS2)粉末を含むカソード60は、最初は湿式スラリーの形態で調製することができ、それを、導電性基材シート65、好ましくは貫通する開口部を有する又は有しないソリッドシートであってよいアルミニウム又はステンレス鋼製シートの片面にコーティングすることで、カソード複合体シート62(図4)が形成される場合がある。常套のロールコーティング技術を、湿式スラリーを導電性基材65の片面に塗布するために使用してよい。(図4及び5)アルミニウムシート65を用いる場合、それは、貫通する開口部を有しないアルミニウムのソリッドシートであっても、あるいは貫通する開口部を有するエキスパンド加工された若しくは穿孔されたアルミニウム箔のシートであるためにグリッド若しくはスクリーンが形成されてもよい。基材シート65の開口部は、そこに穴を開けた又は穿孔した結果であってよい。] 図4 [0085] 二硫化鉄(FeS2)、結合剤、導電性炭素及び溶媒を含む、上記の表1に示す組成を有する湿式カソードスラリー混合物は、均質な混合物が得られるまで表1に示す構成成分を混合することによって調製される。] [0086] 上記の量の構成成分(表1)は、当然、少数の又は多数のバッチのカソードスラリーが調製できるように、バランス良く増減することができる。このように、湿式カソードスラリーは、好ましくは次の組成を有する。FeS2粉末(58.9重量%)、結合剤クレイトン(Kraton)G1651(2重量%)、グラファイト・ティムレックス(Timrex)KS6(4.0重量%)、アセチレンブラック・スーパーP(Super P)(1.5重量%)、炭化水素溶媒類・シェルソル(ShellSol)A100(13.4重量%)及びシェルソルOMS(20.2重量%)。] [0087] FeS2粉末(パイロックス・レッド(Pyrox Red)325)は、供給元のケメトール社(Chemetall GmbH)から入手したままの状態で直接使用してもよい。かかる製品は、供給元によってCaCO3添加剤が既にFeS2粉末に混合された状態で入手してもよい。CaCO3は、典型的にはFeS2粉末を最大1.5重量%含んでいてよい。CaCO3(又はCaCO3を含有する化合物)は、供給元によって添加されて、FeS2のpHを上昇させることでその保存寿命が延びる。すなわち、CaCO3の添加によって生じるFeS2の高いpHは、FeS2が周囲空気に暴露されているか又は保存されているときの、FeS2粒子の内部又は表面上での酸性汚染物質の蓄積速度を減速させることを目的とする。] [0088] 湿式カソードスラリーを調製することが求められれば、FeS2粉末とアセチレンカーボンブラックとのプレミックスを保存場所から取り出して、結合剤及び溶媒溶液との混合に備える。混合物は、グラファイト、結合剤、及び溶媒と、上述のように均質の混合物が得られるまで攪拌され、それにより湿式カソードスラリーが形成される。] [0089] 湿式カソードスラリーを形成した後(表1)、湿式スラリーを次に、導電性基材65の片面にコーティングする。湿式カソードスラリーが上にコーティングされた導電性基材65は、次に、常套の対流式オーブン内(又は不活性ガス中)で乾燥させることでスラリー中の溶媒を蒸発させ、それにより、乾燥カソードコーティング60が導電性基材65の片面に形成される(図4及び5)。この工程は、所望により、導電性基材65の反対側の面も湿式カソードスラリーでコーティングするために繰り返される(表1)。導電性基材65の反対側の面上の湿式カソードスラリーを次に、対流式オーブンで乾燥することで溶媒を蒸発させ、それにより、乾燥カソードコーティング60を導電性基材65の反対側の面上にも形成することができる。金属基材65上にコーティングされた湿式カソードスラリーの乾燥は、好ましくは、オーブン温度を(コーティングのクラッキングを回避するために)初期温度40℃から130℃を超えない最終温度まで、約7〜8分間で又は溶媒が実質上全て蒸発してしまうまで徐々に調節する又は上昇させることによって達成される。(少なくとも約95重量%の溶媒を蒸発させ、好ましくは少なくとも約99.9重量%の溶媒を蒸発させる。)乾燥カソードコーティング60は(導電性基材65の片面だけに適用しようとも、又は両面に適用しようとも)、その後、カレンダ処理に付されて、前記乾燥カソード60の厚さを圧縮することで、完成したカソード複合体62が形成される(図4及び5)。] 図4 [0090] アノード40は、リチウム金属のソリッドシートから調製することができる。アノード40は、望ましくはリチウム金属(純度99.8%)の連続シートから形成される。アノード40中のリチウム金属は、少量のその他の金属、例えばアルミニウム、又はリチウム合金を典型的には約1又は2重量%未満及び最大約5重量%含むカルシウムで合金化されていてもよい。アノード活物質を形成するリチウムは、好ましくは薄い箔の形態である。電池を放電させると、合金中のリチウムは、上述のように、純粋なリチウムとして電気化学的に作用する。したがって、本明細書及び特許請求の範囲で使用するとき、「リチウム又はリチウム金属」という用語は、そのようなリチウム合金をその意味に包含するものとする。アノード40を形成するリチウムシートは、基材を必要としない。リチウムアノード40は、有利には、らせん状の巻線型電池の場合、厚さが望ましくは約0.09〜0.20mm、望ましくは約0.09〜0.19mmのリチウム金属の押出成形シートから形成することができる。] [0091] 単三サイズのLi/FeS2電池10の場合、典型的には、約4.5〜5.0グラムのカソード活物質、例えばFeS2がカソード内に含まれていてよい。アノード活物質、すなわちリチウム又はリチウム合金の量は、その理論容量に基づいて電池の平衡を保つことによって決定される。一般に、アノードの理論容量は、中に含まれている全てのアノード活物質の理想容量(ミリアンペア−時)を計算する必要があり、カソードの理論容量は、中に含まれている全てのカソード活物質の理想容量(ミリアンペア−時)を計算する必要がある。本明細書において使用するとき、アノードの理論容量及びカソードの理論容量というこのような用語の使用は当然、既に述べたように定義済みであると理解されるべきである。「アノード活」物質及び「カソード活」物質はそれぞれ、アノード及びカソード中の物質と定義され、有用な電気化学的放電が可能なものである。(アノードとカソードと、それらの間のセパレータとから構成される部分のみと見なされる。)すなわち、「アノード活物質」及び「カソード活物質」は、電池の負極端子と正極端子との間に外部循環が接続されており、そして電池が通常の方法で使用される場合に、電池の負極端子と正極端子との間の電流の流れを促進する。アノード活物質がリチウム金属(又はリチウム合金)であり及びカソード活物質がFeS2である巻線型円筒形電池10において、アノードの理論比容量は、3861.4ミリアンペア−時/gではリチウムに基づく可能性があり、カソードの理論比容量は、893.5ミリアンペア−時/gではFeS2に基づく可能性がある。本発明の電解質配合物を利用する巻線型円筒形電池10は、アノード又はカソードのどちらかの理論容量(ミリアンペア−時)が過剰であるか又は両方が同じであるように平衡させてもよい。巻線型電池は一般に、カソードの理論容量(ミリアンペア−時)とアノードの理論容量(ミリアンペア−時)との比が約1.05〜1.15となるように平衡させることができる。あるいは、電池は、アノードの理論容量(ミリアンペア−時)とカソードの理論容量とが約1.05〜1.15となるように平衡させもよい。] [0092] 電解質透過性セパレータ材料50、好ましくは、厚さが約0.025mm以下のミクロポアを有するポリプロピレン又はポリエチレンの個々のシートを、リチウムアノードシート40の両面上に付着させる(図4及び5)。好ましい実施形態では、セパレータシートは、厚さが約0.016mmのミクロポアを有するポリエチレン又はポリプロピレンであってよい。ミクロポアを有するポリプロピレンのポア寸法は、望ましくは約0.001〜5マイクロメートルである。第1の(最上部の)セパレータシート50(図4)は、外側のセパレータシートを表すことができ、そして第2のシート50(図4)は、内側のセパレータシートを表すことができる。導電性基材65上にカソードコーティング60を備えたカソード複合体シート62を、次に、内側のセパレータシート50と対向させて配置することで、図4に示す平板状の電極複合体13が形成される。平板状の複合体13(図4)をらせん状に巻き付けることで、電極らせん状アセンブリ70が形成される(図3)。巻き付けは、マンドレルを用いて電極複合体13の延長されたセパレータ縁部50b(図4)を掴んでから、複合体13を時計回りにらせん状に巻き付けることで達成されて、巻き付けられた電極アセンブリ70が形成される(図3)。] 図3 図4 [0093] 巻き付けが終了すると、セパレータ部分50bは、図2及び3に示すように、巻き付けられた電極アセンブリ70のコア98の内側に現れている。非限定的な例として、セパレータの各周期の底縁部50aは、図3に示し及び米国特許第6,443,999号に教示されているように、熱形成して連続的な膜55としてもよい。図3から分かるように、電極らせん状物70は、アノードシート40とカソード複合体62の間にセパレータ材料50を有している。らせん状に巻き付けられた電極アセンブリ70は、ケーシング本体の形に適合した構造(図3)を有している。らせん状に巻き付けられた電極アセンブリ70を、ケーシング20の開口端部30の中へ挿入する。巻き付けたので、電極らせん状物70の外側の層は、図2及び3に示されるセパレータ材料50から構成されている。追加の絶縁層72、例えば、ポリプロピレンテープなどのプラスチックフィルムは、望ましくは外側のセパレータ層50を覆うように配置することができ、そうしてから電極複合体13を巻き付ける。このような場合、らせん状に巻き付けられた電極70は、巻き付けられた電極複合体をケーシングに挿入すると、ケーシング20の内面と接触した絶縁層72を有するようになる(図2及び3)。あるいは、ケーシング20の内面に電気絶縁材料72をコーティングしてから、巻き付けられた電極らせん状物70をケーシングの中に挿入することも可能である。] 図2 図3 [0094] 電解質は、巻き付けた電極らせん状物70を挿入した後で電池ケーシングに加えることも可能である。好ましい電解質溶液は、ジオキソラン(DX)とジメトキシエタン(DME)とスルホランとの混合液に溶解されたヨウ化リチウム(LiI)塩の混合物を含んでいる。ジオキソランは、好ましくは1,3−ジオキソランである。ジオキソランには、アルキル置換ジオキソラン類を包含してもよい。好ましいジメトキシエタンは、1,2−ジメトキシエタンである。] [0095] 巻線型電池10に添加され得る本発明の好ましい電解質配合物には、ジオキソランとジメトチオキシエタンとスルホランとの混合物に溶解されたヨウ化リチウム塩が含まれており、ジオキソランとジメトキシエタンとの重量比は、約0.82〜9.0、望ましくは約0.82〜2.3の範囲内である。ジオキソランは、好ましくは1,3−ジオキソランである。好ましいジメトキシエタンは1,2−ジメトキシエタンである。本発明の電解質配合物中のスルホラン含量は、好ましくは溶媒混合物の約4.8重量%超を構成する。好ましくは、スルホランは、溶媒混合物の約4.8〜5.3重量%までを構成する。しかしながら、スルホランはまた、更に大量に、例えば前記溶媒混合物の約25重量%まで含まれていてもよく、この場合、ジオキソランとジメトキシエタンとの重量比は約0.82〜9.0の範囲内である。電解質には更に、所望により、3,5−ジメチルイソキサゾール(DMI)も溶媒混合物の約0.1〜1重量%まで、例えば約0.2重量%の量で包含される。ヨウ化リチウムは、一般には溶媒混合物中に、1リットル当たり約0.8モルの濃度で含まれている。] [0096] 巻線型電池10における本発明の電解質中の水分含量は、典型的に、全電解質100万部当たり約100部未満であってもよい。しかし、水(脱イオン水)は、電解質中の水分含量が約1000ppmまで、及び最大約2000ppmまでであってもよく、電解質溶媒に添加してもよいと考えられる。(同一出願人による、2008年1月23日出願の特許出願第12/009858号を参照のこと。)したがって、本発明の電解質中の水分含量は、約100〜1000ppm、例えば約500〜1000ppm、又は約600〜1000ppm及び約2000ppmまで、例えば約600〜2000ppmであってよいと考えられる。] [0097] 電池の正極端子17を形成するエンドキャップ18は、その面のうち1つでエンドキャップ18の内面と溶接することができる金属タブ25(カソードタブ)を有してもよい。金属タブ25は、好ましくはアルミニウム又はアルミニウム合金から形成されている。カソード基材65の一部は、図2に示すように、巻き付けたらせん状物の最上部から伸びた部分64にまで及ぶ。カソード基材部分64は、金属タブ25の露出面と溶接してから、ケーシング周縁部22をエンドキャップ18の周りと、それらの間にある絶縁ディスク80の周縁部85と共に圧着させることで、電池の開口端部30を閉じることができる。エンドキャップ18は、望ましくは通気口19を有し、この通気口には、電池内のガス圧が予め定められたレベルを超えると破裂してガスを逃すように設計された、破裂可能な膜を収容することができる。正極端子17は、望ましくはエンドキャップ18の一体化部分である。あるいは、端子17は、米国特許第5,879,832号に記載されている種類のエンドキャップアセンブリの最上部として形成することができ、このアセンブリは、エンドキャップ18の表面に存する開口部から中へ挿入し、その後、それと溶接することもできる。] 図2 [0098] 金属タブ44(アノードタブ)、好ましくはニッケル又はニッケルめっき鋼製のものは、リチウム金属アノード40の一部に押し込むことができる。アノードタブ44は、らせん状物内のどの部分でもリチウム金属の中に押し込むことができ、例えば、それは、図5に示すように、らせん状物の最外層でリチウム金属の中に押し込むことができる。アノードタブ44は、その片面をエンボス加工することで、リチウムの中に押し込もうとするタブの面上に複数の起立部分を形成することができる。タブ44の反対側の面は、図3に示すように、ケーシング側壁24の内面又はより好ましくはケーシング20の閉口端部35の内面のうちどちらかのケーシングの内面に溶接することができる。アノードタブ44は、ケーシングの閉口端部35の内面に溶接することが好ましい。なぜならばこれは、電気スポット溶接プローブ(細長い抵抗溶接電極)を電池コア98の中に挿入することによって容易に達成されるためである。溶接プローブは、電池コア98の外側境界の一部に沿って存在するセパレータスタータタブ50bと接触させないように注意する必要がある。] 図3 図5 [0099] 一次リチウム電池10はまた、所望により、エンドキャップ18の下に配置されて、カソード60とエンドキャップ18の間に直列に接続された、PTC(正温度係数)デバイス95を備えていてもよい(図2)。かかるデバイスは、電池が、予め定められたレベルよりも高い電流ドレインで放電するのを防ぐ。これにより、電池に並外れて高い電流、例えば単三サイズの電池に約6〜8アンペアよりも高い電流が長時間流れた場合、PTCデバイスの抵抗が劇的に増加して、その結果、異常な高ドレインが停止する。当然のことながら、通気口19及びPTCデバイス95以外のデバイスを用いて、電池の誤用又は放電を防いでよい。] 図2 [0100] 単三サイズ及び単四サイズの円筒形 Li/FeS2電池類に適用されるパルス前放電プロトコル パルス前放電(パルス制限ドレイン)プロトコルは、コイン電池類に適用された方法と遜色なく、単三電池10に有利に適用することができる。パルス前放電プロトコルは、新品の電池が製造されてから約24時間以内(1日以内)に有効に適用される。効果的な前放電プロトコルには、少なくとも1サイクル以上、典型的には少なくとも2サイクルのパルスサイクルを含むことができる。各パルスサイクルは、電流ドレインのパルスと、その後の短い休止から成り立っている。各パルスは、典型的に比較的短い期間、例えば約2〜20秒の連続電流ドレインのパルスである。パルスサイクルは、電池の初期容量の約2〜10%を除去するまで繰り返される。かかるパルスは、望ましくはアノードとカソードの間の活性な界面積1cm2当たり1〜50ミリアンペアの固定電流密度又は可変電流密度であってよい。] [0101] 単三サイズのLi/FeS2電池10に適用されるような前放電プロトコルは、典型的に多数のパルスサイクルから成り立っており、例えば、典型的に、5、10、15、20又はそれ以上の連続パルスサイクルのように約2〜100の連続パルス、例えば約20〜40のパルスサイクルと、パルス間に典型的には約10〜100秒間の前記の短い断続的な休止とを合わせて包含している。電解質中に100ppm超の水、例えば約100〜300ppmの水を有する単三LiFeS2電池の特に好ましい前放電プロトコルは、約20〜40のパルスサイクルからなる。各サイクルパルス中の電流ドレインは、約1〜3アンペア、例えば約2アンペアで5〜10秒間の直後、15〜30秒間の休止期間がある。] [0102] 巻き付けられた電極アセンブリ及び好ましい電解質を有する単三及び単四サイズのLi/FeS2電池のためのパルス前放電(制限ドレイン)プロトコル: コイン電池100についての上記実験結果は、リチウムアノード不動態層の抵抗を低下させるパルス前放電(パルス制限ドレイン)プロトコルの有益な効果、すなわちLi/FeS2電池のアノード上での有害なパッシベーション層の蓄積速度を減速させる有益な効果を示しており、単三及び単四サイズの円筒形電池においても同様に実現可能である。コイン電池100に適用したパルス前放電プロトコルは、電池10のように巻き付けられた電極を有する単三及び単四サイズの円筒形電池に適用可能な同程度のパルス放電プロトコルをもたらすように比例配分した。コイン電池類に適用されたときのパルス電流ドレインに関する電流密度(アンペア/cm2)、並びに電池のアノード/カソード比界面積、及びアノードとカソードの負荷、等のパラメータ類を、単三及び単四サイズの電池類への比例配分を達成するために取り入れた。] [0103] こうして、電池10で表される単三サイズのLi/FeS2円筒形電池の場合、次のプロトコルが、同様の電解質系、すなわちジオキソランとジメトキシエタンとスルホランとを含む溶媒系に溶解した電解質リチウム塩、好ましくはヨウ化リチウムに適用可能であることが確かめられた。電解質は、約100〜2000ppm、600〜2000ppm、又は600〜1000ppm、又は約100〜300ppmの水分含量を有していてよい。電解質中の特に好ましい水分含量は、約100〜300ppmであってよい。好ましい電解質組成物類は、本明細書に上述したものと同様であり、望ましくはジオキソランとジメトキシエタンとの重量比が約0.82〜9.0、典型的には約0.82〜2.3であり、スルホラン含量が溶媒混合物の約4.8重量%超、好ましくは約4.8〜5.3重量%であるものである。このような単三サイズのLi/FeS2電池10の場合、有効な前放電(制限ドレイン)プロトコルは、新品の電池が製造されてから約24時間(1日)以内、すなわち、電池内容物をケーシング20に挿入して電池の開口端部30を密閉してから約1日以内に適用されるパルス式プロトコルであることが確かめられた。電池10で表される単三サイズのLi/FeS2電池のための有効な前放電(制限ドレイン)プロトコルは、次の通りである。] [0104] 少なくとも2サイクルのパルスサイクルを順に適用する。ここで、各パルスサイクルには、 i)約1〜3アンペアの電流ドレインを電池に約2〜20秒間加える工程と、 ii)電池を、次の電流ドレインまで約10〜100秒間休止させる工程と、が含まれる。] [0105] 好ましくは、前記の各パルスサイクルで適用される電流ドレインは、約1.5〜2.5アンペアである。順に適用されるパルスサイクル数は、約2〜100サイクル、好ましくは約20〜40サイクルである。] [0106] 同様のプロトコルは、各パルスサイクルにおける電流ドレインが更に低い、すなわち約0.5〜1.5アンペア、好ましくは約0.75〜1.25アンペアであること以外は、単三電池についての上述のようにして単四サイズのLi/FeS2電池10に対して使用されてもよい。] 実施例 [0107] 本発明について特定の実施形態を参照しながら説明してきたが、当然のことながら、本発明の概念から逸脱することなくその他の実施形態も可能であり、すなわち、その他の実施形態は本発明の特許請求及び均等物の範囲内にある。]
权利要求:
請求項1 ハウジングと、正極端子及び負極端子と、リチウム金属及びリチウム合金のうち少なくとも一方を含むアノードと、二硫化鉄(FeS2)及び導電性炭素を含むカソードとを備えた一次電気化学電池であって、前記電池が、その中に挿入された電解質を更に含んでおり、前記電解質が、ジオキソランとジメトキシエタンとスルホランとを含む溶媒混合物に溶解したリチウム塩を含み、前記電解質中の水分含量が、前記電解質100万重量部当たり約100〜2000重量部である、一次電気化学電池。 請求項2 前記電解質中の水分含量が、前記電解質100万重量部当たり約600〜2000重量部である、請求項1に記載の電池。 請求項3 前記ジオキソランが、1,3−ジオキソランを含む、請求項1に記載の電池。 請求項4 前記ジメトキシエタンが、1,2−ジメトキシエタンを含む、請求項1に記載の電池。 請求項5 前記リチウム塩が、ヨウ化リチウム(LiI)を含む、請求項1に記載の電池。 請求項6 ジオキソランとジメトキシエタンとの重量比が、約0.82〜9.0である、請求項1に記載の電池。 請求項7 ケーシング、正極端子及び負極端子、並びに、リチウム金属及びリチウム合金のうち少なくとも一方を含むアノードシート、二硫化鉄(FeS2)及び導電性炭素を含むカソードシート、並びに前記アノードシートと前記カソードシートとの間にあるセパレータシートを備える巻き付けられた電極アセンブリを有する、単三サイズの円筒形電池の調製方法であって、a)前記電極アセンブリを、前記ケーシングの開口端部から中へ挿入する工程と、b)電解質を、前記電極アセンブリと接触するように前記ケーシングに挿入する工程であって、前記電解質が、ジオキソランとジメトキシエタンとスルホランとを含む溶媒混合物に溶解したリチウム塩を含み、前記電解質中の水分含量が、前記電解質100万重量部当たり約100〜2000重量部である工程と、c)前記ケーシングを密封することで、完成した新品の電池を形成する工程と、d)前記新品の電池を、前記ケーシングを密封してから約1日以内に制限ドレインプロトコルに付す工程であって、前記制限ドレインプロトコルが、少なくとも2サイクルのパルスサイクルを順に含み、前記パルスサイクルがそれぞれ、i)約1〜3アンペアの電流ドレインを前記電池に約2〜20秒間加える工程と、ii)次の電流ドレインの前に前記電地を約10〜100秒間休止させる工程と、を含み、前記水を中に含む前記電解質が、前記制限ドレインプロトコルと相まって、前記アノード上での有害なパッシベーション層の蓄積速度を減速させるものである工程と、を含む方法。 請求項8 ケーシング、正極端子及び負極端子、並びに、リチウム金属及びリチウム合金のうち少なくとも一方を含むアノードシート、二硫化鉄(FeS2)及び導電性炭素を含むカソードシート、並びに前記アノードシートと前記カソードシートとの間にあるセパレータシートを備える巻き付けられた電極アセンブリを有する、単四サイズの円筒形電池の調製方法であって、a)前記電極アセンブリを、前記ケーシングの開口端部から中に挿入する工程と、b)電解質を、前記電極アセンブリと接触するように前記ケーシングに挿入する工程であって、前記電解質が、ジオキソランとジメトキシエタンとスルホランとを含む溶媒混合物に溶解したリチウム塩を含み、前記電解質中の水分含量が、前記電解質100万重量部当たり約100〜2000重量部である工程と、c)前記ケーシングを密封することで、完成した新品の電池を形成する工程と、d)前記新品の電池を、前記ケーシングを密封してから約1日以内に制限ドレインプロトコルに付す工程であって、前記制限ドレインプロトコルが、少なくとも2サイクルのパルスサイクルを順に含み、前記パルスサイクルがそれぞれ、i)約0.5〜1.5アンペアの電流ドレインを前記電池に約2〜20秒間加える工程と、ii)次の電流ドレインの前に前記電地を約10〜100秒間休止させる工程と、を含み、前記水分を中に含む前記電解質が、前記制限ドレインプロトコルと相まって、前記アノード上での有害なパッシベーション層の蓄積速度を減速させるものである工程と、を含む方法。 請求項9 各パルスサイクルにおいて前記電池に加えられた前記電流ドレインが、約1.5〜2.5アンペアである、請求項7に記載の方法。 請求項10 各パルスサイクルにおいて前記電池に加えられた前記電流ドレインが、約0.75〜1.25アンペアである、請求項8に記載の方法。 請求項11 前記制限ドレインプロトコルにおいて電池に適用されるパルスサイクル数が、約2〜100サイクルである、請求項7又は8に記載の方法。 請求項12 前記電解質中の前記水分含量が、前記電解質100万重量部当たり約600〜2000重量部である、請求項7又は8に記載の方法。 請求項13 前記ジオキソランが、1,3−ジオキソランを含む、請求項7又は8に記載の方法。 請求項14 前記ジメトキシエタンが、1,2−ジメトキシエタンを含む、請求項7又は8に記載の方法。
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引用文献:
公开号 | 申请日 | 公开日 | 申请人 | 专利标题
法律状态:
2011-11-23| A761| Written withdrawal of application|Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761 Effective date: 20111122 |
优先权:
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